注文住宅でのマイホームを構成するコストを分解してみましょう。
まずは土地(建設地)
当社のお客さまは土地(建設地)から購入してマイホームを建築される方がほとんどです。
この土地というものには用途地域というものがあり、建蔽率、容積率がそれによって異なります。
例えば同じ町内でも道路1本隔てれば建蔽率も容積率も異なる場合があります。
そうなると建てられる建物の大きさが異なる訳ですから土地の価値も当然変わってきます。
解りやすく例を挙げると同じ町内の道路を隔てて真向かいに同じ50坪の土地があったとします。
一方が一種低層住居専用地域 建蔽率40% 容積率60%の土地
もう一方が第1種住居地域 建蔽率60% 容積率200%の土地
道を隔てて真向かいなのでロケーションはさほど変わりません。
もし仮にこの両者が同じ価格で売りに出てたらどちらを買うべきか・・・
前者は50坪×60%で30坪までの建物しか建てられませんが、後者は50坪×200%で100坪の建物が建てられる計算になります。
厳密に言うともう少し複雑な計算をしなければならないのですが、説明を簡単にするとこういうことです。
個人住宅であれば差は余り感じないかも知れません。100坪の個人住宅とか現実的ではありませんからね。
ですが、ここに賃貸アパートを建てると考えると、その差が賃収に大きく影響することが解ると思います。
大きな建物の方が沢山の部屋を作れる訳ですから賃収も大きくなりますね。
すなわち容積率が大きくて安い土地がコスト的には有利と判断できますね。
そして設計です。その土地にどんな建物を建てるのか・・・
この設計費用は建てる建物によって異なります。
平屋・2階建てと3階建てでは当然構造計算の差が出ますし、木造とそれ以外でも異なります。
ここでは仮に40坪の木造の建物を建てる場合で比較していきます。
まずは平屋から
単純計算で基礎が40坪、屋根も40坪必要ですね。
構造躯体は2階が無いので大きな梁は必要ありませんし、柱の本数も2階建てに比べると比較的少なくなります。
外壁は面積で計算すると40坪=132㎡ですから、外周をメートルに直すには
√132=11.48m×4辺=45.92m
これを面積に直すには階高3mとして45.92m×3m=137.76㎡です。
設備機器は2階建と個数が変わらなければ同じです。
これらに原価を掛けてみます。
基礎=40坪×38,000円=1,520,000円
屋根=40坪×11,000円=440,000円
外壁=137.76㎡×8,000円=1,102,000円
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合計 3,06,2000円-①基礎・屋根・外壁の原価
そして2階建てです。
基礎は40坪÷2階=20坪
屋根も40坪÷2階=20坪
構造躯体は2階の床支える大きな梁が必要なので柱の本数も平屋よりも増えます。
外壁の面積は1フロア20坪=66㎡ですから
外周は√66=8.12m×4辺=32.48m
これを面積に直すには階高3mとして32.48m×3m=97.44㎡です。
2階建てなので97.44㎡×2フロア=194.88㎡
これらに原価を掛けてみます。
基礎=20坪×38,000円=760,000円
屋根=20坪×11,000円=220,000円
外壁=194.88㎡×8,000円=1,559,040円
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合計 2,539,040円-②基礎・屋根・外壁の原価
以上の結果から平屋と2階建てで同じ面積の建物の場合、平屋の方がコスト的には高くつくことが解ります。
まあ原価で50万円位の差ですから総額からの割合からするとごくわずかな差かも知れませんが、知っていて損はない知識です。
次に設計段階で決まる使用材料になりますが、既製品を上手く使って建てることです。
これは設計段階からコストを頭に入れて設計する必要があります。
オリジナリティがないと思われるかも知れませんが、どうしてもこだわるところだけ特注品(ワンオフ)を使えばいいのです。
私のこれまでの経験上、特注品(ワンオフ)よりも大量生産の既製品の方が製品単体のクウォリティは高いです。
日本の工業化製品なら厳しいチェックを受けて市場に出てますから当然と言える結果です。
このように家全体のコストを考えながら建物を設計するとよいでしょう。
役務費を削ってはいけません。
大工工事・設備工事・左官工事・塗装工事・クロス工事など、職人さん達の労務費です。これを下げると工事の質が落ちます。
質を落とさずにコストを下げるには掛かる手間を減らすしかありません。
やはりここにも設計がいかに大切かが伺えます。
まずは大工工事ですが、極力工場でのプレカット加工で現場では組み立てるだけにします。
現場での手加工は時間も掛るしコストのロスと言えるでしょう。
設備機器は上棟時までに全て決めておくこと。最初から配管の位置が決まっていれば工事もスムーズに進みます。
左官工事は最近では基礎の巾木や玄関ポーチ周りしかありませんが、このように施工する部分が少なくなるとコストが抑えられます。
塗装工事は最初から色が塗ってある部材を使えば塗装工事が不要になります。
クロス工事も各部屋バラバラのクロス品番を選ぶよりも全て統一して同じクロスを貼った方がもちろんロスが減ります。
あとは工事全体の流れをいかに上手くコントロールするかです。現場監督の腕次第といったところでしょうか。
材料費にはメリハリを。
建物を作る材料についてです。誰でも良い材料を使って建てたいに決まっています。
ですが金に糸目を付けずにという訳には行きません。
適材適所、掛けるところ抜くところメリハリ付けなければお金がいくらあっても足りませんね。
これは当社の考えですが、基礎と構造躯体はしっかり掛ける、後は好みに応じてメリハリを付けるといった感じで提案しています。
後からやり変えが困難な部分は慎重に検討してもらいますね。
特に外装周りは足場を伴うのでやり変えにコストが掛かります。ただし、どんなに良い材料を使っても15年位でメンテナンスを必要とします。塗り替えてもおかしくない材料がいいですね。
その反面、内装は比較的やり変えは容易です。床はフローリングですが、一生使うわけではありません。
なのでそこそこのグレードの物を一定期間後には張り替えるつもりで選んでいます。壁もクロスですから汚れたら張替えですね。
すなわち室内は消耗品であると言えます。えぇっ~!って思われるかも知れませんが基礎と構造体さえしっかりしていれば室内は何度でも造り替えることが出来るのです。
納得して払える利益ですか?
企業である以上、営利目的で活動しているのは当然です。
利益を取らずに仕事を請け負う会社はまずありません。
WEBで「大手工務店 利益率」と検索するといっぱい出てきますが、おおよそ40%が大手工務店の利益率です。
すなわち2000万円の建物の場合、原価は1200万円で利益は800万円
この800万円の中からモデルハウスの維持費、芸能人を使った莫大な広告宣伝費、事務所の家賃、社員の給料、車両費、燃料費、通信費、保険料、税金を支払っています。
会社組織が大きいのでお客様は安心感がありますが、この800万円もお客様が住宅ローンで長年に渡って支払っている訳です。
そう考えるとどうでしょう?なんか少し腹が立ちませんか?
この利益率は地場の工務店で通常20~25%位です。
同じ原価の建物であれば原価1,200万円+利益300万円=1500万円です。
この500万円の差は大きいですね。それでも安心を買う人がなんと多いことか・・・
この安心感が建築業界で一番高いコストなのかも知れません。